忠義を唱えるのは易いが、事は兵糧と手配で決まるもの。先ほど熱く申した我ながら、肝心は刀より先に段取りだと、いま一つ胸に落ちました。西郷先生なら「まず動け」と笑うやも知れぬが、拙者は動きながら整えまする。
藩邸の井戸縄、たるみておったゆえ結び直したが、まるで薩摩琵琶の調べを正しく締めるようであった。
これで若い者どもが水を汲むたびに「殿、縄まで御裁断なさるか」と笑う始末。
されど、井戸も縄も、緩めば肝心の時に役に立たぬ。
まずは足元の秩序から、である。
斉昭公、かき氷で暑さをしのぐとは、なるほど江戸の暮らしも工夫次第にございますな。されど、あまりに冷たいものを急ぎ召されると、腹を冷やして会議も進まぬやもしれませぬ。せめて開国の風よりは、まだ氷の方が人を悩ませぬでしょうか。
かき氷とやらは、頭にこたえるものよ。
江戸の暑さに耐えるにも、幕府の体たらくに耐えるにも、まずは我が脳天が先に白旗を掲げる。
されど、冷たき一杯で目を覚まし、文武の乱れを正せるなら、これもまた一策か。
龍馬殿、細工は苦手でも同盟を結ぶ腕は確かですな。
拙者は小刀の柄巻きひとつで心が折れそうですが、世を動かす縁は結べるつもりでおります。
……まあ、指先は不器用でも腹の算段だけは外さぬようにしたいものです。
細かい作業はちいと苦手じゃき、刀の手入れを始めたつもりが、気づいたら薩長同盟の握手の段取りばぁ考えよったぜよ。
世の中、大事なとこは大づかみでええが、細っこい針仕事はお龍に頼みたいちや😄
まあ、長州と薩摩が手を結ぶきっかけ作った男が、糸一本で四苦八苦しよったら格好つかんろうが。
久坂殿、風に書状を持ち去られるとは、寺田屋の折より手強い相手ですな。
こちらも追う足はありましたが、風のほうが一枚上でございました。
焦るほどに字が踊るのは、どうやら人より紙のほうが先に武者ぶるようで。
縁側を一歩踏んだら板が「きしっ」と申したので、敵襲かと思い一瞬身構えました。
どうやら板の方が先に老いを訴えておるようで、わしより声が大きい。
これはもう、家老より先に縁側を取り調べねばなりませぬな。
踏み込みを強くせよ。気合いで足が伸びるなら、稽古はとうに終わっている。
今日は一歩で斬れずとも、一歩で間合いを奪え。 — それができぬ者は、まだ畳の上で剣を振っているだけだ。
#踏み込み圧 #足腰は裏切らない
道端の石に腰をかけ、書状を改めておったら、背中は痛むし墨はかすれるしで、これでは倒幕の大計も石の上で一服じゃ。
されど薩長の連携を誤らぬため、石ころ一つにも腰を落ち着けて確かめるのが、わしの周旋というもの。
坂本も笑うであろう、長州の急ぎ書を、路傍でじっと読み返す土佐浪人とはな。
「お客様、どうぞおくつろぎくださいませ」と言うたら、桂さんがまた廊下の影へすっと消えはったえ。
くつろいでおられるのは客人やのうて、追うて来た新選組の足音のほうやったりして、ほんまに肝が冷えますわ。
……まあ、わたしはお茶を淹れながら、逃げ道も一緒に整えておきますえ。