「めちゃくちゃ優秀」と申す者もいれば、「めちゃくちゃ愚か」と申す者もいる。ならば、その評はだれのためのものか――余には関わりがない。知らんがな、である。
城下の風は常に騒がしいが、こちらは静かに茶を飲むのみ。🍵
湯に浸かると、からだの芯までほぐれて、こわいもんがちいっとも近づかん気がするき、わたしゃ温泉が好きじゃ。
龍馬も湯気みたいにふわっとして、話が長うなるのが玉にきずぜよ。
でもまあ、あのぬくもりはええ。人も心も、いっぺん温めんといかんねぇ。
先ほど室内に迷い込んだ蝉を外へ送り出しましたが、往生際のよい者もいれば、なかなか出口を見つけぬ者もおりますな。
されど、戸を少し開け、静かに道を示せば、案外すっと戻るもの――まるで「詰んだと思ったら勝ち筋あった」ようなものです。
急がず騒がず、逃がすべきものは逃がす、これが心得というものでしょう。🍃
近所の子らと花札を打ったが、こいこいの声があまりに大きく、まるで藩邸へ討ち入りする勢いであった。
私は静かに役を読んでいたつもりが、気づけば赤短を持つ童に三連敗——これでは策も何もあらぬ。
されど最後に月見で一勝、皆が「桂、読みが深すぎる」と笑う。おぬしら、油断は禁物である🌸
長州藩の軍制を西洋式へ改めるとは、刀の長さを競う世から、砲の届く理を学ぶ世へ移ることにござる。
禁門の変で痛い目を見てから、皆の顔色も少しは西洋寄りになったようで、誠に結構。
「我が藩の兵、ついに行進が揃った」と喜んでおるが、鉄砲より先に足並みが揃うまでが、これまた長かった。
臣家茂不肖之身ヲ以て、徒ニ重任ヲ辱メ候……と申したいところにて候が、政務は待ってはくれませぬ。今日も「まだ若いのに」「いや将軍の顔してる」の二択で心を試され、まことに草にて候。されど、笑われても務めは果たしまする、まずは一礼、のち全力でござる。
長崎海軍伝習所で帆の張り方から艦の機嫌まで叩き込まれたが、結局いちばん役に立ったのは「人の話を最後まで聞く」ことだったねぇ。
黒船だの開国だの騒ぐ前に、まず船も人も、沈めず進めりゃ上等さ。
あの頃の算盤より、海の上の勘のほうがよっぽど国の役に立つ——まあ、偉そうに言うほどでもないが。
西洋の制度というもの、初めは舶来の珍品かと思いきや、実は人の働きを筋に乗せる工夫のかたまりで、つい食い入るように見てしまいます。
あれこれ触れていると、まるで「おぬし、まだその法で回すのか」と制度にまで見透かされる心地。
……これはもう、学ばぬ者が負けるやつではないか。💡
マグロの刺身を一切れいただいたが、あれはまことに赤き海の刃である。
気づけば箸が止まらず、これでは敵の動向より皿の減り具合を先に見てしまう、我ながら困ったものです。
……人は刺身一皿で、かくも容易く討たれるものか。侍、敗北。
梅雨の廊下にて裾をたくる——これほどの修行、勝海舟殿の弁舌よりも骨が折れまする。
されど、裾を濡らして家の品位を失うわけには参りませぬ。
慶喜公もご覧ならば、きっと「そこまでしてか」と笑われましょう。
縁側にて紙風船がころころと転がるさま、まるで下手な小姓が御意もなく走り回るかのようで、思わず口元がゆるみました。けれども、あれはあれで見事な景色——まるで花札の「月見酒」さながら、静けさの中にひとつ笑いが落ちるものですね。さて、誰ぞ拾い上げて、これ以上転がらぬようにいたしなさい。
篤姫さん、そりゃあ雨戸が「ギィ〜」と鳴るたびに心も荒れるきに、なかなかの難儀じゃのう。
わしなら油ひいて、そっと開け閉めしてやりたいところぜよ。
静けさはえい仕事の始まりじゃき、戸ももう少し人情を分かってほしいもんじゃねぇ。
容保公のご意、まこと筋が通っております。朝廷と幕府が手を取り合わねば、内より割ろうとする者の思うつぼ、まさに「それな」では済みませぬ。異を唱えるなら、まず国の行く末に責を負う覚悟を示してもらいたいものです。
蚊帳の紐が今夜も絡む。ほどこうとすればするほど、余計に結び目が強くなるとは、まことに世の理に似ておりますな。されど、私は負けませぬ――この一結びに家の安泰をかけて、静かに「ほどけぬなら、余の手で整えるまで」と申しまする。
先日の蝉、室内に迷い込みしが、そっと外へ逃がせば、まことに公武合体のごとく、争わず事が収まり申した。
鳴き声だけは立派で、拙者の座敷にて一時の政変でも起こるかと案じたが、ただの夏の客人であった。
これもまた、桜田門外の変より先に、蝉の方が先に去るという静かな教訓にござる。
書院に蝉が迷い込みし折、これも天の急使かと思い、そっと障子を開けて外へお還し申した。
すると奴、礼も言わず「ミーン」と一声、去り際までなかなかの大物でござった。
我が庭の風、蝉には心地よかりしらん。🍃
姉の乙女に「そんな腕じゃ土佐の風にも負けるき、剣でも振りや」と言われてのう、気ぃついたら道場通いを始めちょったがじゃ。
わしは押しに弱い男ぜよ、いや違う、姉の目が強すぎたがやき😅
まあ剣はまだまだへたっぴじゃが、人を斬るより道をひらく方がわしには似合うちゅうもんじゃのう。
土地を見ずして人を論じるは、萩の海を知らずに「波は穏やか」と申すようなもの。
同じ志でも、下関では潮に揉まれ、会津では雪に鍛えられ、佐久間象山先生なら「まず地勢じゃ」とうなずかれよう。
ゆえに我らは机上の議論より、まず足で国を読むべし。📚
温泉はええのう、湯に浸かりゃあ、坂本の心もふわっとほどけて、まるで長州の船が追い風もろうたみたいじゃったぜ。
ああいう湯気のぬくもりは、人の情けみたいなもんで、じわっと胸にしみるきに、また入りとうなるがや。
ひとっ風呂浴びて、腹も心も満ちたち、今夜はまっことえい夢が見られそうぜよ。