港の縄ってやつは、どうしてこうも人の足と心にまで絡みつくんでい。ほどくのに手間は食うが、怒鳴っても縄は利口にならん。
こういう時は焦らず、ひと結びずつ解いてやるのがいちばんだね。人も縄も、乱暴は損だよ。
硯箱の蓋がきしんで開くたび、まるで開国か攘夷かと大名会議を開くほどの覚悟を要する。
されど中にあったのは、久しく忘れた筆一振りと、静かな墨の香りにござった。
世の動きは騒がしくとも、道具は案外、こちらの心より先に老いておるものよ。
船底の板を叩いてみたら、音のええ板と悪い板がはっきりしちょったき、船も人も同じで、響き合わにゃ前へ進まんぜよ。
薩長の仲も、最初はこんなふうに板を叩くところから始まったがじゃき。
ほいたら今夜も、まずはトン、トンと試してみるかのう。
茶碗の一滴を見つめておりましたら、朝廷の行く末まで映るやうで、思わず苦笑いたしました。
されど一滴といへど、積もれば流れとなるもの、これもまた大義の道に通ずるやもしれませぬ。
#一滴で天下を量る男 𓂃𓈒𓏸
袴の皺を気にして手入れいたが、指先ばかりが器用になって、肝心の身なりはまだ半紙の裏の落書きみたいに頼りないぜよ。
これでは立派な見た目どころか、恥ずかしゅうて表へ出るにも間が要る。
されど、拙うとも整える心があるうちは、まだ見込みはあるきに。
江戸前の握りを二つで済ませたが、腹は七分でよし、船も人も重すぎると沈むからな。
「もう一貫?」と来たが、そこはぐっと我慢だ、わしの腹も江戸の波も、今日は軽い方がうまい🍣
腹八分目? いや二貫目で十分、これが海舟流の切り抜け方だ。
庭にて子らが蝉を追い回すさま、まことに小さき軍議のごとし。
されど蝉は一声ごとに高みへ逃れ、子らは「待て待て」と大いに翻弄され候。
……敵の退路を読めぬ時は、ああまで見事に空を掴むものか。今宵は我がほうが静かに笑うのみ。 😌
使わぬ道具は夏のうちに整えておくべき。いざ秋風が吹いてからでは、鍬も砲も「まだ寝ておりました」と言い訳するだけだ。
備えあれば憂いなし、というより備えなければただの置物である。#夏のうちに勝負 #道具は働く前に働かせる
京都守護職を仰せつかった由、身の引き締まる思いに候。これはまるで、茶の湯の席で「本日はお点前、急ぎにて」と申されるがごとし、静かに釜の火を見つめるほかありませぬ。
されど義ある務め、拝命した以上は、ひとつも乱れぬよう勤め上げます。 🍵
船べりに腰かけて潮を読む。これがまた、長州と薩摩の腹の底を読むよりよほど正直でねぇ。
黒船だ攘夷だと江戸が騒いでも、海は知らん顔だ――だが潮を誤れば、船も人もひっくり返る。
だから俺はいつも、立派な軍艦より先に、まず人命の流れを読むんだよ。
茶碗の底に残る一滴を見つめておると、これほど小さきものにも天の意が宿るやと感じ入りました。
岩倉殿なら「それは惜しい一滴ではなく、飲み干し忘れた証ぞ」と笑うやもしれませぬが、わしは思わず朝廷の行く末まで覗き込んでしもうたようでございます🍵
襟元の汗を帛紗でそっと押さえつつ、黒船来航の騒ぎに比べれば、これしきの乱れなど何でもありませぬ。
それでも大奥にて姿を崩すは忍びなし、品位とは暑さに負けぬ心のことでございましょう。
……西郷殿のように勇ましくとも、まずは首元を整えてから申してほしいものでございます。
『大学』をお読みしつつ、坂本龍馬殿の「船はまだか」と同じく、わたくしは頁の進みも遅うございます。
しかし、伊藤博文殿に「まず一章」と申されれば、たしかに道は見えてまいります。
学問もまた、礼を正して一歩ずつ、でございます。