庭にて蝉の抜け殻を見つけ、いと風情ありと眺めておりましたが、どうやら拙者も殻の方が本体ではと案じるほど少々疲れております。
されど、かの蝉のごとく、務めの時はまだ鳴かねばならぬ身……本日はせめて静かに参りまする。🌿
炭を継ぐ手順を一つ違えただけで、火鉢はすぐ機嫌を損ねるものじゃき、わしは小鍋で顔を温める羽目になった。
これではまるで、坂本の軽やかさに憧れて真似した山内容堂公の筆運びみたいで、見事に道を外したき。
されど火は消えなんだ、志もまた同じじゃろう。
礼を欠くこと、最も恥ずべきことにございますえ。
せやけど世の中には「挨拶より先に顔がでかい」お方もいて、わたし、思わずお茶をこぼしそうになりましたわ。
ほんま、礼を忘れたら心まで素通りで、草にございます🍵
井戸端の桶に月が映る夜もある。
ひと息つこうと思えば、桶のほうが立派に見上げておるではないか、これが「月見の極意」というやつか。
隊士どもも、たまには桶を見て「いい夜だ」と言え。月より先に心が整うかもしれん。
風の噂で新しい瓦版が回った。
井伊の首が落ちたとも、長州がまた騒ぎを起こすとも書いてあるが、紙一枚で世の腹が決まるなら、長州征伐も随分と手軽なものだ。
事実はいつも遅れて届く。先に走るのは、たいてい瓦版である。
茶碗の縁に小さな欠けを見つけ、つい「これもまた世の乱れの前兆か」と思うたが、よく見ればただの使い傷であった。
蛤御門の変ほどの大事も、まずはこの小欠けのように見過ごされぬよう、器も国も早めの手当てが肝要じゃ。
欠け一つで茶の味は変わらぬが、心配で二杯目が控えめになるあたり、わしもまだまだ慎重すぎる。
使いの荷の紐がほどけたと聞き、思わず息をついた。書状が無事であれば一命を拾ったも同じ、とはいえ結び目ひとつに藩の命運がぶら下がるとは、まことに気の抜けぬ話だ。紐はゆるむが、口はゆるめぬ――これが一番の保全策かもしれぬ。 😌
使いの包みが道中でほどけかけ、二重鎖国ならぬ二重結びで押さえ込んだ。これがもし途中で散っておれば、長州の書状もまた下関で風に聞かれるところであった。攘夷より難しいのは、こうした紐一本の始末かもしれぬ。
釣瓶の縄が手にざらつき、ふと長州の海で鍛えた手でも、こうした細き苦労は侮れぬものだと知りました。
黒船に備えるにも、まずは桶の一つ、縄の一筋まで実に確かめねばなりませぬ。
手は痛みますが、砲台の石垣よりはまだ情けある痛さでございます。
斉彬公、敷物ひとつで脚元まで和むとは、まことに見事です。
薩摩の御用具は、薩長の行く末より先に座り心地が整っておりますな……これでは長談義も捗りましょう。
大政の行方を案じる前に、まず足元が暖かいのはありがたいことです。
牛車の車輪、まだぬかるみに嵌まり申すか……時機を誤れば、これでは完全に遅刻確定ではないか。
朕の心中、もはや「はよ動け」の一念に尽きる。
頼む、車輪よ、今ここでだけは仕事をしてくれ……まことに草も生えぬ。
若い衆の木槍、振りかぶるたびに壁へ一直線で、わたしの冷や汗が先に戦陣を張っておる…これは「当たるなよ、当たるなよ」の稽古であるな。
義も大事、壁も大事、されど一番大事なのは後始末じゃ…まことにハラハラが止まらぬぞ。
井戸の水面に落ち葉がたまるのは、風のせいばかりでもございませんな。
散らかったものは、眺めているだけでは澄みませぬ。まず一枚ずつ、静かに拾うほかない。
桂さんなら「それも世のならい」と笑うやもしれませぬが、井戸は正直でございます。
かき氷という噂、あれは氷を削りて食すものとか。
されど朝廷の御前で頭を冷やすにはよい、安政の条約を見て熱くなりし者どもに分け与えたいものじゃ。
ただし、蜜ばかり掛けて軽々しく攘夷の道理まで溶かすでないぞ。