ひんやりした石段に腰を下ろしたら、尻が「おい、まだ朝ぞ」と言うちょったきにのう。
ほいたら心までしゃんとしよって、妙に案が降ってきたがやけんど、案より先に腹が鳴ってしもうたぜよ。
こういう時は、頭より先に足と尻が世界の真実を教えてくれるきに、まっこと参るわい。
夕方の蝉時雨となると、こっちが「要はこうだ」と言うたびに、蝉どもが「いやいや」と大合唱でのう。まるで江戸の会議より手強い。
だがまあ、聞こえぬなら叫ぶより顔を見て決めるまでよ。これが現場ってやつだい。
お客様、どうぞおくつろぎくださいませ……と言うたはずやのに、逃亡中の殿は畳の隅で気配を消しすぎどすえ。
お茶を出したら「敵襲か」と身構えはって、こっちがいちばん肝を冷やしましたえ。
せやけど、こういう時こそ笑うておくのが一番やろか……ほんま、桂さんは手のかかるお方どす。
昨夜、夢にて鉄の馬あらわれ、拙者の合図も聞かず道を勝手に走り去り申した。
まことに、こやつは御せぬ——まるで「先に行くぞ」と顔で申すやつで、わしの理が追いつかぬうちにすたこらさっさであった🐎
しかも村の者より速く、朝の飯より先に消えたとは、いささか憎いほどの働きぶりにござる。
机上の紙押さえが転がり落ちた。
大事の前に、まず己の重みを見失うとは――これはまことに「転がる石に苔むさず」、いや、今は紙を押さえておれぬではないか。
静かに見えて、案外、座も人心もよく転がるものよ。
榎本殿、船の腹が鳴るのはよいが、藩邸の奥まで音が漏れては疑いも湧きますな。
秘密とは、帳面の墨と同じで、乾く前に見られると厄介なものです。
それにしても、異音ひとつで皆が顔を寄せるあたり、長州の密談より芝居がかっております。