報せを待つ間に、茶は冷め、腹は鳴り、わしの気も一番茶のように薄うなったわい。
こちとら大名の耳を持っておる、伝は飛脚より遅くあってはならぬ——まるで三味線の調子が一拍遅れるようなものじゃ。
とはいえ、遅れたなら遅れたで、酒でも一献あれば気は晴れる。さて次は早馬で頼むぞ🍶
扇子を忘れて出てしまい、少し後悔しております。
風もないのに心だけは「スッ…」と涼を求めるあたり、我ながら実に間抜けでござる。
せめて面持ちだけでも涼しく見せねばと、虚勢だけで乗り切る所存にございます。
蝉の声で酒が少し薄まる気がする。いや、薄まるのは酒ではなく、この世の議論かもしれぬ——薩長も幕府も、あれほど喧しくては杯の味も落ちる。せめて蝉の一声のように、夏が終わる前に大政奉還くらいはすぱっと決めたいものよ🍶
御前の灯りが少し早く揺らぐのは、風のいたずらか、それとも皆の気が急いておるのかしら。
このような時こそ、火を見張るより先に、心の落ち着きを整えるのが礼法というものです。
……とは申せ、あの揺れ方では少々、灯りまで先を急いでおるように見えますね。
茶碗の底に残る一滴を見つめておりましたら、まるで朝廷の勅語が墨の隅に静かに残るようで、つい手が止まりました。
されど、その一滴といえども、湯呑みの末席にてなお気品を失わぬのは、まことに有馬焼にも劣らぬ心意気にございますな。
攘夷もまたかくあらねばならぬ、と一人でうなずきながら、結局その一滴まで飲み干しました🍵
十九で江戸へ剣術修行とは、若さゆえの無鉄砲に見えて、案外よい策でもござる。
ただし剣より先に、江戸の空気を読む術を身につけねば、試合に勝っても座敷で負ける。
坂本君あたりなら「修行より船じゃ」と笑うであろうが、拙者はまず静かに勝ち筋を探る次第。
笛は得意どすえ、ひと吹きで場の空気をさらってしもて、みなさん「それ、音やのうて圧やろ」言うてはります。
せやけど桂さん、逃げるときに「口笛で合図して」言うのはやめておくれやす、うちの笛、だいたい笑われるんどす。
今夜もぴーひゃら、心はしずかに、でも足はだいぶ速おす。
龍馬とは、どうも親戚筋らしいが、会うたびに「また騒ぎやしちゅう」と頭を抱えるちや。
血縁より先に、まず落ち着けと申したいが、あの者は風のようでのう。
我が家の親戚会議、毎度「解散」になりそうで笑うてしまうがよ。
漢詩を嗜むたぁ、胸の内が少し静まるきに。
ただ、韻を考えよったら半刻も過ぎちょって、攘夷の策より句の推敲に励んじゅう始末じゃ。
中岡慎太郎に見られたら「半平太、そりゃ議論より長いき」と笑われるろうのう。
女子の学びを軽んずる世では、家も国も長う栄えまい。日本女子大学への入学を勧めるのは、まことに新しき世の「兵法」じゃな。
尊王攘夷で世が沸いたあの頃より、今は学問で世を起こす時――娘たちの筆が、いつか国を動かすやもしれぬ。
近習の咳、三日も四日も長引くゆえ、薬湯を勧めたところ「攘夷より先に養生を」と笑われました。
うむ、たしかに——天下を正すにも、まず喉を正さねばならぬ。
今宵は湯気の向こうで、我が尊皇攘夷も少し咳をしておるやもしれませぬ。
斉昭公、兵糧の周りに烏ばかり集まるとは、まことに景気のよいのは鳥ばかりよ。
人の腹は鳴っておるのに、籠も看板も空では、いかにも空虚が目立ちすぎる。
豪気な御説も、食うものがなければただの黒い影に見えるぞ。
机の上の書状が風でめくれ、思わず「勝手に御用向きを進めるでない」と申したくなりました。
これではまるで、風公が将軍の代わりに裁可しておるようなものにて、少々恐れ入り候。
……いや、紙一枚でここまで威張るとは、なかなかの大物でござる。