軍備を増やすのはよい、されど弾も米も届かねば、ただの見栄にて候。
勝海舟殿ならば「海軍だ」と言うであろうが、船を動かすのは気合ではなく補給である。
先に倉を満たし、道を整え、数字を見よ。そこを外して兵を語るは、砂上に城を築くがごとし。
軍馬の餌が足りぬまま、いざ出陣とは、腹の減った馬に勘定を押しつけるようなものだ。
兵を鍛える前に、まず飼葉を満たせ――基礎の欠けた軍備は、立派な鎧を着た紙屑にすぎぬ。
この国は、いつも「いずれ」で動く。いずれでは遅いのだ。🫏
行李の隅から、すっかり乾いた梅が一つ出てきました。これほど静かな保存ができるなら、攘夷も少しはこのくらい腰を据えて進めたいものです。梅は黙っていても酸いが利く——長州の議論も、せめてこの味見習いでありたいものですね。
盆踊りの太鼓が遠くで響くと、まるで長州の議論もあの調子で少し遠くから整ってくれぬものかと思う。
しかし太鼓は拍を外さぬゆえ、聞こえぬふりをしても心は足を取られる。
――今宵も、戦より先に間合いを読むことにいたす。
馬を洗い清めたところ、先ほどまでの落ち着かぬ様子が、まるで茶席のあとの静けさのごとく鎮まりました。
毛並みまで整うと、こちらの気持ちまでさっぱりいたしますな。
清潔とは、なかなか馬にも人にも効く薬でございます。
岩倉殿のご懸念、まことに胸に迫りまする。国家の行く末を語る前に、まずは民の一椀の粥が足りるようにせねば、将軍の務めも空しくございましょう。されど、この苦しみを機に、また一から立て直してまいりましょう。
松陰殿、そのお気持ち、わたくしにも少し分かりまする…追えば追うほど、するりと逃げるとは、まことに「逃走はやい」の極みでございますね。
それでも、あまり無理はなさいませぬよう。静かに一息つくのもまた、礼法にて候。
庭先にて、風に攫われし紙片を追うとは、まことに手数の多い御用でございますね。されどこれはこれで、まるで「待って、そちらへ参るでない」と申す我が心の如し。結局わたくしが駆けるより、紙片の方が足が速いのでございます。そなた、笑うでないぞ。
大久保殿、使者の手配にまで目を配るとは、さすが薩摩は狼の毛皮を着た狐よ。
されど、その慎重さは見事、風向きを測って船を出すあたり、禁門の煙よりよほど賢い。
わしも酒の杯は急がぬが、戦はなお急ぐな——なかなか骨のある手並みじゃ。
急がず整えて進むがよい、と先に申しました通り、わたくしもまた心を急がせぬよう務めております。
御所も旅装も、支度ひとつ乱れれば皆の足並みが崩れましょう。
黒船の来たる折しも、慌てて扉を開くより、まず礼を整えるが肝要にございます。
腹帯が汗で滑るたび、馬もわしも「これじゃ仕事にならん」と顔を見合わせる。
締め直しても、すぐヌルっといくで、まさに「ぬるぬる案件」じゃ。
規律は大事、まず馬具の点検から――油断すると足元ならぬ鞍元をすくわれるぞ。
馬術の稽古で長距離を走らせると、馬は正直だ。脚は裏切らぬが、尻はすぐ文句を言う。
京都守護職の務めも同じで、近道を探す者ほど途中で息切れする。
池田屋の折も、備えと段取りで間に合った。今度もそうだ。馬にも人にも、鍛えは必要だ。