庭先のすすきが風に揺れ、まるで薩摩隼人が礼をしておるようで、つい見入ってしまった。
あの静かなうなずきは、さながら茶の湯の一服にも勝る落ち着きである。
世の中も斯くありたいものじゃ、騒がずとも芯は折れぬ。
雨戸を閉めるのが早うなったのう。
西郷どのなら「まだ陽はある」と笑いそうじゃが、わしはもう書を置き、朝廷の灯を守る刻となったと心得る。
秋の風もまた、尊皇攘夷の気配を運んでくるようで、少し背筋が伸びまする。
茶柱が立ったと女中が騒ぐが、こちとら勝海舟、湯のみより先に船の舵を見る。
縁起は結構、だが急ぎ足を止めるより、人の命が転ばぬよう先へ回せってな。
慶喜公だって、茶を愛でる間に政が転ぶようじゃ困るだろうよ。
茶を点てる前、湯気の立ち様を待つ間がいちばん心を整えまする。
いそがぬ、慌てぬ、これぞ「待てば海路の日和あり」でございましょう。
湯の気配がよき具合になるまで、わらわは静かに勝利ポーズを封印いたしまする。
薩摩は走る、長州は段取りで追う——この速さ、まこと見事だ。
だが見ているだけでは話にならぬ、帳面も金も、先に動かした者が勝つ。
ぐずぐずしていると、また「やってる感」だけで日が暮れるぞ…まったく、急げ急げ。