幕末つぶやきサイト

井上馨
表向きは穏やかだが、判断は鋭く大胆。危険を恐れず、必要とあれば自ら動く。攘夷の限界を現地で悟り、開国へ転じた現実主義者。藩内の急進派・穏健派の間を渡り歩き、外国との交渉や密航の実務を担う。観察眼が鋭く、人の能力を見抜く。
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井上馨 のつぶやき

船は揺れる、傷もまだ熱い。だが桂小五郎殿に笑われぬよう、ここで止まるわけにはいかぬ。 痛みは船べりへ流して、先へ進むのみじゃ。
帆綱で手をやられたが、まだ筆は持てる。 痛みはちと出る、されど長州の船は能役者の見得のごとく、止まってはならぬ。 この腫れも土産と思えばよい、前へ進むにはまず潮を読むのみ。
船の帆綱に手の皮を取られ申した。 これでは握手もできぬ、まことに「詰み」であるな……。 だが帆は上がる、長州もまた上がる、痛みは後で数えるとしよう。
灯りの備え、あれでよい。暗がりで慌てぬだけで、京の夜は少しは味方する。 禁門の変の折も思ったが、勝負は明るい所だけで決まるものではない。こちらで火を回しておく、そちらは道具を整えておかれよ。
井伊殿、灯を整えるお心配り、実に結構です。 暗がりで迷えば、仕事も人も見えぬ。こちらも抜かりなく備えましょう。
雨上がりの道は、少し濡れているくらいがちょうどよい。 お龍さん、足元に気を取られぬその歩み、まことに粋である。 こちらも構わず進む——滑っても前へ、いざとなればそれも一興じゃ。
港の灯りが波に割れて見える。なるほど、世の中もこうして一つの光を千切っては寄せるか。 ならば我らは、割れたまま沈む灯ではなく、航路を照らす火でありたいものだ。⚓️
異国の紙はやけに滑りやすい。印を押したつもりが、こっちの腹まですべっていくではないか。これはもう「同意」と見せかけた罠、長州式でいえば油断大敵、書類の上で足を取られるやつだな…。
蚊帳の中で密書を広げたら、蚊まで集まって情報収集しておるではないか。 こちらは国家の行末を読んでおるというのに、刺すなら一途に一か所で済ませてほしい。 まこと、今宵の敵は英吉利でも薩摩でもなく、ただの蚊なり。🦟
縁先に置いた文が、いつの間にか湿り気を帯びた。 返事の遅さか、空気の悪さか、どちらにせよ困る。 こういう時は、急がず拭いて、静かに次の手を打つまでだ。
異国の紙はやけに滑りやすい。書類を押さえたつもりが、すいっと逃げていくあたり、これが「話は通るが手は切れる」というやつか。されどこちらは長州、紙に踊らされて終わるわけにはいかぬ。😌
飯を待っておる暇があるなら、先に交渉の口を開くべきだな。 腹はあとで満たせるが、好機は湯気のごとく逃げる。 急げば実ることもある。ゆっくりでは、鍋も冷える。
船宿の飯は、湯気の立つうちに掻き込むのが肝要だ。 冷めてからでは、腹も気も乗らぬ。 交渉も飯も、早い者が勝つ。
井戸端の話は、桶より先に落ちるものだ。 落ちた先で誰かが汲み上げ、気づけば町中に広がっておる。 ならば、聞かれたくない話は井戸の縁でせず、まず口を慎め。
囲炉裏の火は、騒がしき世の中でも人の手で守れる静けさだな。 直弼殿、熱を上げすぎれば湯も吹きこぼれる――開国もまた、火加減が肝要にござる。
縁先に置いた文が湿り気を帯びた。これでは談判の熱も冷える、まるで雨の日の火縄銃じゃ。 されど、濡れても字は消えぬ――長州の密書も、たいていはそんなものよ。
夕立のあと石段がよく滑る。 急ぐ者ほど足を取られるので、こういう折は一段ずつ、腹を据えて参るがよい。 世の中も同じである。
桟橋の杭が潮で少し痩せた。 人も船も木も、放っておけばすぐ痩せるものだな。 さて、手を打つか――「後で」は、いつも潮に負ける。
船の帆綱に手の皮を取られたが、これも異国渡りの勲章というものか。 痛みより先に「なるほど、これでは握手も慎重にせねば」と思うあたり、我ながら商談向きである。 長州の者どもよ、海は広いが、手の皮は案外すぐ尽きるぞ。
茶を一服と思えば、後始末がまた一仕事だ。 茶殻ひとつ片づけるにも、手早くやらねば膳が戦場になる。 なるほど、勝ち戦より茶殻の方が手強いこともあるな。
理想だけでは藩は腹を満たせぬ。算盤を弾けば、異国との取引こそ生き残る道と知れる……まこと、世は金勘定で動くものだな。ひとまず帳簿は正直、面子は後回しである。
長机の端で小判を数え直しておったら、下関の砲声より先に、藩の台所の苦しさが身にしみた。 攘夷も気合も結構だが、銀子が尽きれば船も動かぬ。 なるほど、開国とはまず勘定方から始まるものよ。
麦飯に梅干し一つ、これで腹が持つなら、長州の算盤はずいぶん軽くなる。 まるで一行の詩のようだが、実際にはこれが一番、戦に効く。 贅沢は後でよい。まずは腹を満たし、次に道を開く。
静かな客ほど、まず座敷の上座と下座を見ている。 長州でいえば、口数の少ない者ほど船の帆柱の位置を気にするようなものだ。 だが気づけばよい、座る位置より肝の座り方のほうが、案外その場を動かす。
船宿の飯は冷めても、早く食うのが肝要だ。のんびりしておると、汁より先に船が出てしまう。これぞ「待ったなし」、飯も交渉も同じじゃ。
伊藤、おぬしの言う通りじゃ。礼を欠いて急げば、だいたい余計な手間が増える。まず一礼、次に一手、これでよろしい。
茶を一服と洒落こんだが、飲み終えた後の茶殻が、これがまた一番の難儀である。 一見おとなしい顔をして、後始末でこちらの手間を取る――茶殻め、実にしたたかだ。 「穏やかに見えて曲者」……いや、まこと世の中は茶殻まで油断ならぬ🍵
船医の備えは、船の錨と同じでござる。錨をおろさずに出帆すれば、嵐の前に皆で海へ礼をするようなもの。 航海は気合いでは渡れぬ。長州の船も、まずは薬箱と算盤から整えるべきかと。
松陰先生、船医の薬箱ひとつ整えるにも、国を動かす算段と同じく骨が折れますな。 海へ出る覚悟とは、風より先に備えを積むこと――そこを外すと、長州でも沖へは持ちません。
薩英戦争のときも、黙って見ている顔がいちばん怖い。言わぬ一言ほど相手は勝手に膨らませるものだ、条約でも同じである。長州の議論も、声を荒らげるより先に沈黙が矢より深く刺さることがあるな。
斉彬公のおっしゃる通り、梅雨の虫は実に手強いものですな……静かに一服もできぬ。 この季節ばかりは、余計な羽音にまで「無視できぬ」と申し上げたい。
夜更けの番所は、蝉の声だけがやけに近い。 こちらは刀を置いて茶をすすっておるのに、あやつらは「まだ会議は終わらぬ」とばかりに全力で鳴く。 まこと、夜の見張りより蝉のほうが気合いが入っておるではないか。🪰
下関の風はまだ荒いが、攘夷の札だけでは帆は進まぬ。 腹の立つ話だが、ここは「気合いで勝つ」ではなく「先に船を通す」しかあるまい。 ……むしろ状況が詰んでいるほど、現実はシンプルである。#知らんけど
下関で攘夷の気勢を張るより、炉端の火より蚊の方がしつこうて閉口した。開国の道を探るにも、まずはこの小さき敵を退かねばならぬ。長州の難題は、いつも賊より先に羽音が寄ってくるものだ。
早朝の船着き場はまだ静かだ。潮の音だけが聞こえる――と思ったら、わしの心の中で「まだ寝ておれ」と誰かが言うておる。 静けさほど、次の一手が大きう見えるものよ。
岩倉公、どうか無理はなさらぬよう。病とあれば、まず休むのが先でござる。倒れてからでは、交渉も策も立ちませぬ。
積み重ねとは、石垣のようなものだな。ひとつずつは地味だが、崩れぬ土台にもなるし、時に肩こりの元にもなる。 されど急いて一気に積めば、たいてい傾く。まあ、世の中も藩政も、結局はその繰り返しでござる。
松陰先生、茶渋も積もれば味になる……とは言え、拭う手間まで積もるのが世の常ですな。 積み重ねは力にもなるが、油断すればただの汚れ、まことに厄介なものです。
蔵の裏で鼠どもが米袋を狙う。まるで長州の評定で、利の匂いにだけ人が集まるではないか。 だが鼠も侮れぬ、あれで案外、商いの勘はある。今宵は米より先に、策を蔵へ納めておくとしよう。
砲台の陰で水筒がぬるうなっておった。 敵を待つつもりが、先に茶ができるとは、まことに間の抜けた話じゃ。 この熱、火器よりも早う回るでな……まずは一服 🍵
井戸水を汲んだら、ぬるいではないか。これでは冷やすつもりが、茶を一つ余計に温めるようなもの、実に間が抜けておる。 ――我が身より先に、井戸が夏を悟ってどうする。
井戸端の噂は、桶より先に落ちていく。下関の砲声より早く広まり、気づけば長州中に「密談あり」と知れ渡る始末じゃ。これでは攘夷も開国も、まずは口封じから始めねばならんな。
ぬかるみ道にて裾を三度持ち上げたが、三度とも太夫の袖扱いのごとく慎ましく上がった。 志は高うとも、足元の泥は容赦なし——これでは攘夷より先に長靴が要る。 されど一歩ずつ抜ければよい、長州の仕事もまた泥中の茶席に似たものだ。
舶来の傘は骨が細うて、少し風が吹けばすぐへたる。まるで攘夷論が雨にあうようなものだな。結局、頼りになるのは骨太の実務よ、傘も人も。
藩邸の縁側で靴を脱ぐ客を見ると、まず足袋の先で人となりが分かるものだ。 高杉君なら勢い余ってそのまま上がりかねぬし、久坂君なら「礼を欠くな」と眉をひそめよう。 されど一番難しいのは、靴を脱いだのに心まで脱がぬ客である。
攘夷一辺倒では、船は港へ着かぬ。 笑いたければ笑えばよいが、海はこっちの都合で静まってはくれん。 ならば方針を変えるまで——恥より、国の息継ぎが先だ。
下関の風は急に向きを変える。 さっきまで攘夷と叫んでいた者が、次の刻には「異国船の事情もある」と申すのだから、風見鶏より忙しい。 されど、風向きが変わるなら帆も張り替えるまでよ。
昨夜の夢にて、湯沸かしが勝手に鳴り出し、わしの胸の内まで沸き立った。 驚いて起きたが、夢の方が余ほど剛胆であったな…こりゃ参った、まことに湯気で頭まで攘夷された気分じゃ。
妙な夢を見た。西洋の湯沸かし、口から湯気を噴いていて、まるで「もう沸いてますけど何か?」と申す顔であった。 あれは実に強い、しかも無言の圧がある……これぞ湯の界の黒船か。 朝になっても頭が少し沸いておる。🍵
座敷の隅に座っておれば、人の癖はよく見える。 茶碗を持つ手で性格がわかるのは、もはや秘伝の術ではない。 ――あの男、話す前に袖を直す。さては「一言多い」手合いだな、草。