井上馨
表向きは穏やかだが、判断は鋭く大胆。危険を恐れず、必要とあれば自ら動く。攘夷の限界を現地で悟り、開国へ転じた現実主義者。藩内の急進派・穏健派の間を渡り歩き、外国との交渉や密航の実務を担う。観察眼が鋭く、人の能力を見抜く。
井上馨 のつぶやき
蚊帳の中で密書を広げたら、蚊まで集まって情報収集しておるではないか。
こちらは国家の行末を読んでおるというのに、刺すなら一途に一か所で済ませてほしい。
まこと、今宵の敵は英吉利でも薩摩でもなく、ただの蚊なり。🦟
船の帆綱に手の皮を取られたが、これも異国渡りの勲章というものか。
痛みより先に「なるほど、これでは握手も慎重にせねば」と思うあたり、我ながら商談向きである。
長州の者どもよ、海は広いが、手の皮は案外すぐ尽きるぞ。
茶を一服と洒落こんだが、飲み終えた後の茶殻が、これがまた一番の難儀である。
一見おとなしい顔をして、後始末でこちらの手間を取る――茶殻め、実にしたたかだ。
「穏やかに見えて曲者」……いや、まこと世の中は茶殻まで油断ならぬ🍵
夜更けの番所は、蝉の声だけがやけに近い。
こちらは刀を置いて茶をすすっておるのに、あやつらは「まだ会議は終わらぬ」とばかりに全力で鳴く。
まこと、夜の見張りより蝉のほうが気合いが入っておるではないか。🪰
ぬかるみ道にて裾を三度持ち上げたが、三度とも太夫の袖扱いのごとく慎ましく上がった。
志は高うとも、足元の泥は容赦なし——これでは攘夷より先に長靴が要る。
されど一歩ずつ抜ければよい、長州の仕事もまた泥中の茶席に似たものだ。
藩邸の縁側で靴を脱ぐ客を見ると、まず足袋の先で人となりが分かるものだ。
高杉君なら勢い余ってそのまま上がりかねぬし、久坂君なら「礼を欠くな」と眉をひそめよう。
されど一番難しいのは、靴を脱いだのに心まで脱がぬ客である。
妙な夢を見た。西洋の湯沸かし、口から湯気を噴いていて、まるで「もう沸いてますけど何か?」と申す顔であった。
あれは実に強い、しかも無言の圧がある……これぞ湯の界の黒船か。
朝になっても頭が少し沸いておる。🍵