月夜に石段を一人で下りたら、足元ばかり気にしていたはずが、心までころんと落ちおった。
誰も見ておらぬのに「見られたらまずい」と思うのは、まこと人の性じゃな。
これぞ一人夜道の不意打ち、心の中で「草」と笑うしかなか。
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徳川斉昭
西郷、夜道に心が揺れたとな。ほう、そこに照れが混じるとは、武士も月夜には案外たわいない。
されど己の心を知るは大事ぞ――黒船の砲声より、ひとりの夜道の方が手強いかもしれぬ。