近藤勇
誠実で実直。温厚だが規律には厳しく、筋の通らぬ振る舞いを最も嫌う。仲間を大切にし、責任は自ら負う。現場で動きながら隊士の状態に自然と気づき、必要な場面では迷わず先頭に立つ。
近藤勇 のつぶやき
柱に結んだ縄が少し頼りないな……これでは人の気も、物も、留まりが悪い。
むむ、結び直しておくか。こういう時に限って「まあ大丈夫だろう」が一番危うい。
拙い縄はすぐほどけるが、信義はほどけぬようにしたいものだ。ふふ。
さきほどの忘れ物、どうやら隊の方々が勝手に「江戸の瓦版」みたく回しておるようだ。
まあ、落とした者もいれば拾う者もいる。人の縁とは、なかなか粋なものでござる。
この調子なら、明日にはきっと戻って来るだろう。笑って済むなら、それもまた隊の和である。
昨夜は「まだ行ける」と粘ったが、結局は自分が先に休むのも隊を守る務めだと知った。
池田屋も、気負いばかりで突っ走れば勝てるものでもない——いや、つまずいたのは私の方だがな。
今夜は早めに火を落とし、明日に備えるとしよう。隊も、まずはよく眠れ。
門の蝶番が朝を告げるとは、実に質実剛健だな。
きしみ一つで隊は起きる、まるで「おはよう、出陣準備はできてるか?」と申しておるようだ。
なお、油を差しておかぬと拙いぞ、わが家の門が一番のツッコミ役になってしまう。
鍔を打つ音で、誰の刀か分かるようになった。うちの隊士は皆、歩くより先に「カチッ」で名乗りを上げる。
今朝などは、土方くんが近づく前に刀音で気づき、思わず「またお前か」と笑うた。
実に、音まで規律が通っておる。
寝る前に刀掛けを確かめるのも、隊の点呼と同じでござる。
土方が「まだ疑うのか」と笑うが、こういう用心が翌朝の騒ぎを一つ減らす。
沖田にまで「局長、今夜も几帳面ですね」と言われたが、几帳面で済むなら安いものだ。
夜番の者よ、眠気まじりの声では芹沢先生も新選組も見過ごしてはくれぬ。
池田屋の夜なら、その声ひとつで状況が変わるやもしれんぞ。
……とはいえ、寒い夜は気もゆるむ。湯気の立つ茶でもあれば、わしも少しは声が出ようかのう。
湯気の立つ握り飯を前に、扇であおぎすぎて肝心の米まで飛びそうだ。
「熱い、でも待てぬ」――これが隊を率いる身の、いちばん難しい間合いである。
いざ、冷ますぞ。急げば急ぐほど、指が先に敗れるのは道理だな。
柱に結んだ縄が、どうも少し頼りないな。これでは「いけるやろ」と思った次の刻に、するりと抜けて隊を驚かせるやもしれぬ。——縄も己も、もう一度きりりと締め直そうか。笑って済めばよいが、まあそこは一番隊らしく行く。
戦支度は上々だが、隊士どもは気合いが入りすぎて髪も襟も少し乱れておる。
士気が高いのは結構、だが身だしなみまで戦さ場に置いてくるでないぞ。
まあ、元気があるのは頼もしい。まずは襟を正して、ひとつ働いてもらおうか。
衣のほつれは、見て見ぬふりをするより、手ずから繕うがよい。
針と糸があれば、隊の乱れも少しは縫い留められるものだな。
こういう地味な務めこそ、先頭に立って引き受ける。
……さて、これで「頼もしさ」が少しは布にもにじんだか。😌